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超音波モータ用メタエンジンブロックを高精度3Dプリントで製作|音響OAMによる非接触回転制御への応用

公開日: 2026.06.24

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超音波モータ 3Dプリント,microArch S140

【目次】

  • 1. 研究チームが直面した製造課題

  • 2. BMFのPµSL技術が担った役割

  • 3. 実験で確認された性能

  • 4. この応用事例が示す開発上の価値

  • 5. まとめ

超音波モータ用メタエンジンブロックが音波の線形運動量を音響OAMへ変換する概念図

図1:メタエンジンブロック(MEB)による音響OAM生成の概念図。入射音波の線形運動量を、MEB内で軌道角運動量を持つ音場へ変換する仕組みを示しています。出典:Advanced Materials, DOI: 10.1002/adma.20220157


音を利用して物体を非接触で動かす技術は、マイクロ粒子操作、マイクロ流体デバイス、チップスケール機械、バイオ・医療分野の研究において重要性が高まっています。特に、音波が持つ軌道角運動量(Orbital Angular Momentum, OAM)を利用できれば、磁場や機械的接触に依存せず、微小物体を回転・搬送・操作できる可能性があります。

一方で、音響OAMを安定して発生させるには、音場の位相や境界条件を精密に制御する必要があります。従来は、多数の音源を円周状に配置する方法や、複雑な共振構造を用いる方法が検討されてきました。しかし、装置が大型化しやすく、チップスケール化や不規則形状への展開が難しいという課題がありました。

この課題に対し、南京大学およびUniversidad Carlos III de Madridの研究チームは、メタエンジンブロック(Meta Engine Block, MEB)を用いた新しい超音波モータを設計しました。本研究は「Twisting Linear to Orbital Angular Momentum in an Ultrasonic Motor」としてAdvanced Materialsに掲載され、同誌の表紙にも採用されています。

1. 研究チームが直面した製造課題

本研究の鍵となるMEBは、入射する音波の線形運動量を、回転成分を持つ軌道角運動量へ変換するための音響メタ構造です。単に円形の空洞を作るだけでは、目的とするOAMモードを高効率に励起することはできません。MEBの境界部には、音波の反射条件と位相遅延を設計通りに与える微細構造が必要になります。

研究では、ヘルムホルツ共鳴器をベースとしたメタ構造ユニットを用い、構造パラメータhを変化させることで、0〜2πの範囲で音波の位相遅延を制御しました。個々のユニットには、W=8 mm、d=0.4 mm、t=0.2 mmという寸法要素が含まれます。

microArch S140で製作された超音波モータ用MEBのヘルムホルツ共鳴器メタ構造

図2:microArch® S140で製作されたMEBのS1側メタ構造アレイ。ヘルムホルツ共鳴器をベースとしたユニットセルにより、音波の位相遅延を制御します。単位構造には W=8 mm、d=0.4 mm、t=0.2 mm の寸法要素が含まれます。出典:Advanced Materials, DOI: 10.1002/adma.202201575

このメタ構造の難しさは、形状が単なる外形ではなく、音響応答そのものを決める設計変数になっている点にあります。開口部dが狭くなりすぎたり、薄肉部tが変形したり、共鳴空間の寸法が設計値からずれたりすると、各ユニットが与える位相遅延が変化し、MEB内で狙ったOAMモード以外の成分が混在しやすくなります。

つまり、MEBの試作では「小さく作れること」だけでなく、音場制御に関わる微細形状を設計通りに再現することが重要になります。この点が、一般的な形状確認用の3Dプリントや、加工自由度の限られる従来工法では対応しにくい理由です。

そのため、MEBの試作では、複雑な微細形状を短期間で作れるだけでなく、設計変更に対応しながら、音響機能に関わる寸法を安定して再現できる製造手段が求められました。

2. BMFのPµSL技術が担った役割

本研究では、MEB全体を一体造形したのではなく、音場の位相制御を担うS1側のメタ構造アレイを、BMFの高精度マイクロ3DプリンターmicroArch® S140で製作しました。剛体境界部はアルミ合金6061のCNC加工で作られており、3DプリントはMEBの中でも、音響OAMの生成に関わる機能構造の試作に用いられています。

microArch® S140は、10µm光学解像度に対応するPµSL技術を採用しており、薄肉部、細い開口部、共鳴空間を含む複雑な微細構造の試作に適しています。この事例では、3Dプリント部品が単なる形状確認用モデルではなく、音場の境界条件を実装する機能部品として使用された点が重要です。

このケースで重要なのは、3Dプリント部品が単なる外観モデルではなく、音場の境界条件を実装する機能部品として使われている点です。MEB内で生成される音響渦は、境界部の反射条件と位相分布に依存します。つまり、微細構造の寸法再現性は、後続の音場形成、OAM変換効率、負荷の非接触回転性能に直接関係します。

従来の切削加工では、このような微細な共鳴器アレイを短期間で複数条件試作することが難しく、一般的な3Dプリントでは薄肉部や細い開口部の再現性が課題になりやすくなります。BMFの高精度3DプリントサービスおよびmicroArch® S140は、こうした音響メタマテリアルや研究用微細構造の試作に有効な選択肢となります。

3. 実験で確認された性能

研究チームは、25 kHzの超音波領域でMEBを用いたOAM生成と非接触回転を検証しました。MEB内では4次のOAMモードが生成され、ベッセル型の音響強度パターンは入射波と比較して10倍以上に増強されました。

さらに、厚さ2 mm、直径20 mmのフォームディスクをMEB中央に配置した実験では、2.5 Wの入力でディスクが直ちに回転を開始しました。メタ構造アレイの向きを反転させることで、回転方向も反転できることが確認されています。出力を4 Wまで高めた条件では、負荷回転速度は最大約1000 rpmに達しました。

音響OAMによるフォームディスクの非接触回転実験と超音波モータの回転速度評価図3:音響OAMによる非接触回転実験。4次および−4次の2D音響渦により、フォームディスクの回転方向を切り替えられることが確認されました。出力を4 Wまで高めた条件では、負荷回転速度は最大約1000 rpmに達しました。出典:Advanced Materials, DOI: 10.1002/adma.202201575

また、半径1 mmのフォームボールを用いた実験では、MEB内壁に沿った軌道運動も観察されました。一方、メタ構造アレイを用いない対照実験では、フォームディスクも小球も回転しませんでした。この結果は、MEBの微細メタ構造が音響OAMの生成と放射トルクの発生に不可欠であることを示しています。

研究チームはさらに、3430 Hzの可聴域における扇形MEBでも1次OAMの生成を実証しました。測定された音圧振幅はドーナツ状の分布を示し、位相分布もらせん状となりました。これは、MEBの境界設計により、超音波領域だけでなく異なる周波数帯でも音響渦を制御できる可能性を示しています。

4. この応用事例が示す開発上の価値

本研究は、超音波モータそのものだけでなく、音響メタマテリアル、マイクロ流体、微粒子操作、非接触アクチュエータ、チップスケールデバイスの研究開発にも参考になります。

また、音響分野に限らず、メタマテリアル研究における微細構造試作の参考事例として、BMFではメタマテリアル研究における精密3Dプリンティング技術も紹介しています。

特に、次のような課題を持つ研究開発では、BMFのマイクロ3Dプリント技術が有効な選択肢となります。

l ヘルムホルツ共鳴器や微細流路を含む音響メタ構造を試作したい

l 位相制御や境界条件に関わる微細構造を設計通りに再現したい

l 切削加工では難しい複雑な空洞・薄肉・アレイ構造を短期間で検証したい

l マイクロ粒子操作、細胞操作、非接触回転制御に関わる研究部品を少量製作したい

l 複数の設計条件を比較しながら、研究サイクルを短縮したい

BMFのマイクロ3Dプリント技術は、微細構造を高精度に造形するだけでなく、研究段階での設計変更や機能検証にも対応しやすい製造手段です。音響メタマテリアル、マイクロ流体デバイス、センサー構造、微小機械部品などの研究開発では、研究開発向け高精度3Dプリントとして活用できます。

5. まとめ

本事例では、BMFのmicroArch® S140で製作された微細メタ構造が、音響OAMを利用した超音波モータの実証において重要な役割を果たしました。MEBの境界条件を精密に実装することで、線形運動量から軌道角運動量への変換、非接触回転、双方向回転、高速回転が実験的に確認されています。

これは、マイクロ3Dプリントが単なる形状確認用の試作にとどまらず、音響場、流体場、光学場、力学場などを制御する機能構造の開発にも活用できることを示す事例です。

音響メタマテリアル、超音波デバイス、マイクロ流体、非接触操作用部品などの微細構造試作をご検討の場合は、BMF Japanまでご相談ください。

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参考文献:

Jingjing Liu, Zhengwei Li, Yujiang Ding, An Chen, Bin Liang, Jing Yang, Jian-Chun Cheng, Johan Christensen, “Twisting Linear to Orbital Angular Momentum in an Ultrasonic Motor,” Advanced Materials, DOI: 10.1002/adma.202201575.

注:論文中では中国市場での表記として「nanoArch S140」と記載されていますが、日本市場では同一機種を「microArch® S140」として案内しています。

【目次】

  • 1. 研究チームが直面した製造課題

  • 2. BMFのPµSL技術が担った役割

  • 3. 実験で確認された性能

  • 4. この応用事例が示す開発上の価値

  • 5. まとめ

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