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触覚センサー用の半球状マイクロ構造をPµSLで製作|身体化AI・ロボティクス研究への応用

公開日: 2026.06.12

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触覚センサー × 3Dプリント

【目次】

  • 1. 高密度触覚センサーに求められる複数情報の同時検出

  • 2. 接触高さを検出する半球状マイクロ構造

  • 3. microArch S140を用いたマイクロ構造とPDMSモールドの製作

  • 4. BMF技術の活用ポイント

  • 5. 700µmの空間分解能と柔らかさ認識を確認

  • 6. 触覚センサー開発を支えるPµSL精密3Dプリント

身体化AIやロボティクスの発展に伴い、ロボットが物体に触れた際の圧力だけでなく、形状や柔らかさまで識別できる触覚センシング技術が求められています。対象物の状態に応じて把持力を調整するためには、接触面における力の分布や変形量を、高い空間分解能で検出する必要があります。

一方、高密度センサーアレイで複数の触覚情報を取得するには、電極設計や信号処理だけでは不十分です。接触面に配置される三次元マイクロ構造の寸法や配置が安定しなければ、接触面積や力の伝達状態にばらつきが生じ、センサーの応答に影響する可能性があります。

香港科技大学(広州)、復旦大学、香港科技大学などの研究チームは、圧力分布と接触高さを組み合わせて物体の柔らかさを評価する、サブミリメートル分解能のバイモーダル触覚センサーアレイ(BTSA)を開発しました。本研究成果は、学術誌『Advanced Materials』に「Sub-Milliscale-Resolution Bimodal Tactile Sensor Array with Human-Skin-Like Graphesthesia Sensation」として発表されています。

研究では、BMFの高精度3Dプリンター「microArch S140」が、センサー表面に配置される半球状マイクロ構造の製作に使用されました。

圧力分布と接触高さを検出するバイモーダル触覚センサーアレイの概念図

図1:バイモーダル触覚センサーアレイの概念図(出典:He et al., Advanced Materials, 2026)

1. 高密度触覚センサーに求められる複数情報の同時検出

人の指先は、圧力、振動、すべり、形状などの異なる情報を組み合わせることで、触れた物体の状態を判断しています。ロボットに同様の触覚認識機能を持たせるためには、単一の信号だけでなく、複数の物理情報を同時に取得する必要があります。

研究チームが開発したバイモーダル触覚センサーアレイは、圧電センサーアレイ層と摩擦電気センサーアレイ層の二層構造で構成されています。下層の圧電センサーアレイが圧力分布を測定し、上層の摩擦電気センサーアレイが接触高さを検出します。

取得した圧力と接触高さの情報を組み合わせることで、接触対象のヤング率分布を推定し、表面形状だけでなく、柔らかさの違いに基づく触覚認識を可能にしました。

圧力分布と接触高さを検出するバイモーダル触覚センサーアレイの概念図

図2:BTSAの積層構造。上層の摩擦電気センサーアレイが接触高さを検出し、下層の圧電センサーアレイが圧力分布を測定する。(出典:He et al., Advanced Materials, 2026)

2. 接触高さを検出する半球状マイクロ構造

摩擦電気センサーアレイ層には、10×10個の半球状マイクロ構造が配置されています。各構造は直径350µmで、作動ユニットの高さは225µm、参照ユニットの高さは175µmです。高さの異なるユニットは、チェッカーボード状に配列されました。

この半球状構造は、接触対象が押し込まれた際の接触面積の変化を、電圧信号として取得するために用いられます。また、上層で受けた力を下層の圧電センサーへ伝える役割も担っています。

そのため、半球形状やユニット間の高さの違いを安定して製作することは、接触高さの測定と圧力分布の取得を組み合わせるうえで重要な製造要素となります。

3. microArch S140を用いたマイクロ構造とPDMSモールドの製作

研究チームは、BMFのPµSL技術を採用したmicroArch S140を用いて、半球状マイクロ構造を備えた原型を製作しました。その後、原型にPDMSを流し込み、反転形状を持つモールドを作製しています。

作製したPDMSモールドには、UV硬化性エポキシ樹脂NOA81を充填し、紫外線で硬化させることで、摩擦電気センサーアレイ層の構造を転写しました。さらに、銀電極のスプレー形成、レーザー加工、摩擦電気材料のコーティングを経て、センサー層へと組み込まれています。

4. BMF技術の活用ポイント

  • 半球状マイクロ構造の製作: 直径350µmで高さの異なる三次元構造を、センサーアレイの原型として製作。

  • PDMSモールドへの展開: 3Dプリントした原型を用いて反転モールドを作製し、後工程の樹脂転写に活用。

  • 複合製造プロセスへの展開: 3Dプリントした原型を起点に、PDMS転写、UV硬化樹脂成形、電極加工を組み合わせたデバイス製作へ展開。

本研究では、3Dプリントがセンサー全体を直接製造したのではなく、複数の製造技術を組み合わせる工程の中で、三次元マイクロ構造を形成する役割を担いました。

5. 700µmの空間分解能と柔らかさ認識を確認

完成したバイモーダル触覚センサーアレイは、圧力分布、接触高さ、材料の柔らかさに関する情報を取得し、サブミリメートルスケールでの触覚認識性能が評価されました。

主な研究結果

  • 空間分解能: 700µm

  • センサー密度: 226 pixels/cm²

  • 圧電センサーの応答時間: 接触時48ms、分離時50ms

  • 摩擦電気センサーの応答時間: 接触時41ms、分離時48ms

  • 圧電センサーの検出下限: 8.7kPa

  •  安定性評価: 10,000回を超える接触・分離サイクル後も、安定した応答を確認

バイモーダル触覚センサーによるソフトネス暗号化パターンの認識結果

図3:柔らかさの違いにより埋め込まれたパターンを、触覚センサーアレイと深層学習により識別した結果

(出典:He et al., Advanced Materials, 2026)

摩擦電気センサーから算出した接触高さの誤差はすべて±10%以内で、多くは±5%以内でした。また、圧力と接触高さから算出したヤング率は、万能材料試験機による測定値と良好な一致を示しています。

研究チームはさらに、硬さの異なる材料によって情報を埋め込んだパターンを製作し、センサーによる認識を行いました。深層学習モデルを用いたデータマトリックスパターンの分類では、テストデータに対して98.27%の認識精度が報告されています。

6. 触覚センサー開発を支えるPµSL精密3Dプリント

本研究は、PµSL精密3Dプリントが、触覚センサーや電子皮膚の研究において、接触界面を構成する三次元マイクロ構造の原型製作に有効であることを示す事例です。

特に、半球状構造、微細ピラー、周期配列構造、PDMS転写用原型など、接触面の形状がデバイス性能に影響する用途では、設計に応じたマイクロ構造を製作し、後工程へ展開できることが重要です。

BMFの高精度3Dプリンターは、触覚センサー、精密電子部品、医療機器研究などにおける微細構造の試作やモールド製作に活用されています。研究室や開発部門での活用については、研究開発向け高精度3Dプリントをご覧ください。複雑な微細構造の試作・検証については、工業試作向け高精度3Dプリントでも詳しくご紹介しています。

関連する装置については、高精度3Dプリンター microArchシリーズをご覧ください。マイクロ構造やPDMSモールド用原型の製作をご検討の場合は、BMF Japanのお問い合わせページよりご相談ください。

 

参考文献:

He et al., Advanced Materials, 2026, DOI: 10.1002/adma.202519734

【目次】

  • 1. 高密度触覚センサーに求められる複数情報の同時検出

  • 2. 接触高さを検出する半球状マイクロ構造

  • 3. microArch S140を用いたマイクロ構造とPDMSモールドの製作

  • 4. BMF技術の活用ポイント

  • 5. 700µmの空間分解能と柔らかさ認識を確認

  • 6. 触覚センサー開発を支えるPµSL精密3Dプリント

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