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根系に着想を得たマイクロニードルパッチ | 硬質微針とPDMSを結ぶ微細ラティスを 高精度3Dプリント

公開日: 2026.10.19

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マイクロニードル 3Dプリンター

【目次】

  • 1. はじめに

  • 2. 口腔粘膜に沿う柔軟性と、組織を穿刺する剛性を両立

  • 3. PDMSが入り込む二層ラティスを微針の根元に配置

  • 4. 総厚100 µm未満に向けたラティスの小型化

  • 5. microArch® S130で硬質微針とラティスを一体造形

  • 6. 造形したラティスへPDMSを充填し、柔軟基材と結合

  • 7. 摩擦試験300サイクル超、小型ブタで5時間後も保持

  • 8. 硬質微細部品と柔軟材料を、三次元形状で結ぶ開発方法

  • 9. 微細ラティス・異種材料一体化構造の造形相談

はじめに

口腔粘膜へ薬剤を届けるマイクロニードルパッチには、組織を穿刺する微針の硬さと、曲面に沿って変形する基材の柔らかさが求められます。一方、硬質材料と軟質材料を平面的に接合するだけでは、変形時に接合部へ応力が集中し、剥離や微針の脱落につながるおそれがあります。韓国の複数機関からなる研究チームは、樹木の根が土壌とかみ合う仕組みに着想を得たマイクロニードルパッチ「R-MAP」を開発しました。

製造の鍵となったのが、微針の根元に設けた三次元ラティスです。研究チームは、BMFのPµSL方式高精度3DプリンターmicroArch® S130で、硬質微針とラティスを一体造形しました。その空隙へPDMSを充填・硬化することで、硬質部と柔軟基材を機械的にかみ合わせています。

剥離試験で測定したラティスとPDMSのインターロック強度は、SCR=0.32で最大3.66 N/cmでした。さらに、粘膜接着層を加えたR-MAP-MLは、小型ブタの口腔内評価で頬粘膜と舌に5時間後も完全に保持されました。この研究成果は、“Root-Inspired Microneedle Patch With Interlocked Rigid-Soft Architecture for High Tissue-Adaptiveness”というタイトルで、Advanced Scienceでオンライン公開されています。

根系に着想を得たR-MAPの実物、微針・ラティス構造と製造プロセス

図1 根系に着想を得たR-MAPの実物、微針・ラティス構造と製造プロセス(出典:Lee et al., Advanced Science, 2026, Fig. 1/CC BY)

マイクロニードルの構造や一般的な製造方法については、マイクロニードルの特徴と3Dプリンター活用例でも紹介しています。

口腔粘膜に沿う柔軟性と、組織を穿刺する剛性を両立

マイクロニードルは、微細な針を組織表面へ刺入し、薬剤などを届けるためのデバイスです。確実な穿刺には微針の剛性が必要ですが、口腔粘膜は濡れており、部位によって曲率が異なるうえ、会話や咀嚼によって動きます。パッチ全体が硬いと表面へ均一に沿わず、局所的な浮きや剥離につながります。

そこで研究チームは、硬質樹脂で微針を形成し、基材には柔軟なPDMSを用いました。ただし、性質の異なる材料を平面的に接合すると、変形時の応力が接合部へ集中します。化学接着だけに頼らず、三次元形状によって硬質部と柔軟部を結ぶことが、本研究の製造課題でした。

PDMSが入り込む二層ラティスを微針の根元に配置

開発された微針は高さ1,000 µm、基部幅500 µmで、5 × 5のアレイとして配置されています。各微針の根元には二層のラティスがあり、液状のPDMSが交差するストラットの間へ入り込んで硬化します。これにより、微針とPDMSは接着面だけでなく、三次元的なかみ合わせによって保持されます。

この構造では、ストラットを細くすればよいわけではありません。細すぎると微針との接続部が破損し、太すぎると空隙が狭くなってPDMSを十分に充填できません。研究チームは、500 µmのセルに対してストラット厚さを100~200 µmまで20 µm刻みで変え、剥離試験からSCR=0.24~0.32を設計範囲に絞り込みました。

図2 SCRを変えた微細ラティス、剥離強度、曲面追従性およびセルサイズの評価.jpg

図2 SCRを変えた微細ラティス、剥離強度、曲面追従性およびセルサイズの評価(出典:Lee et al., Advanced Science, 2026, Fig. 2/CC BY)

総厚100 µm未満に向けたラティスの小型化

口腔内の曲面へ追従させるには、基材の厚さも抑える必要があります。論文では、約200 µm厚のパッチよりも100 µm厚のパッチが曲面へ密着する様子が示されています。

薄型化に伴い、微針基部のラティスも小型化する必要があります。研究チームはセルサイズを500 µmから70 µmまで変えてPDMSとのインターロックを評価し、本研究で評価した最小の70 µmセルでも有効なかみ合わせが維持されることを確認しました。この結果をもとに、総厚100 µm未満のR-MAPを製作しています。70 µmは本研究で評価したセルサイズであり、装置の最小造形寸法を示す値ではありません。

微針の鋭い先端、細いストラット、PDMSが通る空隙を一体で形成するため、ラティスの欠損や空隙の閉塞を抑えられる造形方法が求められました。

microArch® S130で硬質微針とラティスを一体造形

研究チームは、微針・ラティス一体型の樹脂構造をBMFのmicroArch® S130とBMFの専用樹脂BIOで造形しました。

microArch® S130は、BMF独自のPµSL(Projection Micro-Stereolithography)技術を採用した高精度3Dプリンターです。本研究では、高さ1,000 µmの微針と基部の三次元ラティスを一体造形する工程に用いられました。

造形後は99%IPAで未硬化樹脂を洗浄し、405 nmの光を用いて50°Cで2時間後硬化しました。さらにIPAで二次洗浄し、残留成分を除去しています。

PµSLによる造形に対応する現行機種と主な仕様は、高精度3Dプリンター microArch®シリーズでご確認いただけます。

造形したラティスへPDMSを充填し、柔軟基材と結合

研究チームはPDMSの主剤と硬化剤を10:1の重量比で混合し、造形した硬質微針・ラティス構造へ注入しました。ラティス内部へPDMSを行き渡らせ、気泡を除くため、真空中で1時間処理しています。その後、80°Cで2時間熱硬化し、冷却後にR-MAPを底板から分離しました。

論文では、この3D造形品を「R-MAP mold」と呼んでいます。PDMS硬化後は底板との境界で分離されますが、硬質微針とラティスはPDMS基材に組み込まれ、最終パッチの穿刺部として残ります。

研究チームはさらに、濡れた口腔粘膜への付着を高めるため、パッチ表面へ粘膜接着性ハイドロゲル層を形成し、R-MAP-MLとして評価しました。

高精度3DプリントとPDMS成形を組み合わせる別の製造例については、PµSL精密3DプリントとPDMS転写の研究事例をご覧ください。

摩擦試験300サイクル超、小型ブタで5時間後も保持

研究チームは、ラティスとPDMSの結合強度、微針の機械強度、湿潤組織への付着性を段階的に評価しました。

l 剥離試験で測定したインターロック強度:最大3.66 N/cm(SCR=0.32)

l  R-MAPの破壊荷重:PDMS嵌合あり4.60 ± 0.61 N/なし1.51 ± 0.12 N

l R-MAP-MLの離体ブタ頬粘膜摩擦試験:300サイクルを超えて完全付着を維持

l 小型ブタ口腔粘膜への刺入深さ:691~703 µm

l R-MAP-MLの小型ブタ口腔内評価:頬粘膜と舌で5時間後も完全保持。24時間後には全パッチが脱落

SCRごとの応力分布は有限要素解析で比較されました。一方、上記5項目は実験結果です。5時間の保持は小型ブタの特定口腔部位での評価であり、人体での保持時間を示すものではありません。

粘膜接着層の作用、ブタ頬粘膜を用いた接着試験および離体摩擦試験

図3 粘膜接着層の作用、ブタ頬粘膜を用いた接着試験および離体摩擦試験(出典:Lee et al., Advanced Science, 2026, Fig. 3/CC BY)



小型ブタの口腔内5部位におけるR-MAP-MLの保持評価

図4 小型ブタの口腔内5部位におけるR-MAP-MLの保持評価(出典:Lee et al., Advanced Science, 2026, Fig. 4/CC BY)

硬質微細部品と柔軟材料を、三次元形状で結ぶ開発方法

本事例では、マイクロニードルパッチ全体を一つの材料で3Dプリントしていません。組織を穿刺する微針とラティスには硬質樹脂、曲面に沿う基材にはPDMS、濡れた組織との接触面には粘膜接着性ハイドロゲルを用い、それぞれに異なる役割を持たせています。

その中で高精度3Dプリントが担ったのは、硬質微針とPDMS基材を機械的に結ぶ三次元インターフェースの形成です。研究チームは、液状PDMSが入り込む空隙と、変形時の荷重分布を考慮してラティス形状を検討しました。

この開発方法は、マイクロニードルのほか、柔軟センサー、ウェアラブルデバイス、ソフトロボティクス、組織接触部品など、硬質微細部品と軟質材料を組み合わせる試作にも参考になります。

微細ラティス・異種材料一体化構造の造形相談

微針、微細ラティス、アンダーカット、軟質材料を充填する内部空隙などを含む部品について、設計データや要求仕様をもとに、PµSLによる造形可否と後工程を含めた試作方法をご相談いただけます。

微細構造の造形可否について相談する


l 参考論文

Jongchan Lee, Yeongjun Song, Yonghyun Cho, et al., “Root-Inspired Microneedle Patch With Interlocked Rigid-Soft Architecture for High Tissue-Adaptiveness,” Advanced Science, 2026, e77211. First published online: 15 August 2026. DOI: 10.1002/advs.77211

【目次】

  • 1. はじめに

  • 2. 口腔粘膜に沿う柔軟性と、組織を穿刺する剛性を両立

  • 3. PDMSが入り込む二層ラティスを微針の根元に配置

  • 4. 総厚100 µm未満に向けたラティスの小型化

  • 5. microArch® S130で硬質微針とラティスを一体造形

  • 6. 造形したラティスへPDMSを充填し、柔軟基材と結合

  • 7. 摩擦試験300サイクル超、小型ブタで5時間後も保持

  • 8. 硬質微細部品と柔軟材料を、三次元形状で結ぶ開発方法

  • 9. 微細ラティス・異種材料一体化構造の造形相談

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