【目次】
1. 研究背景:脳内投薬における物理的限界
2. 解決策:SPIRAL螺旋構造による設計アプローチ
3. BMF PμSL技術による具現化と詳細スペック
4. 研究成果:次世代の精密医療に向けて
5. まとめ:研究と製造をつなぐ3Dプリンティング
ニューヨーク大学アブダビ校(NYU Abu Dhabi)の研究チームは、BMF社の超高精度3Dプリンター「microArch S240」を採用し、革新的な螺旋(ヘリカル)型脳内注入カテーテル「SPIRAL」を開発しました。本デバイスは、脳疾患治疗における「逆流(バックフロー)の抑制」と「広範囲かつ均一な薬剤拡散」という長年の課題に対し、3Dプリンティングならではの幾何学的アプローチで解決策を提示しました。
1. 研究背景:脳内投薬における物理的限界
パーキンソン病や脳腫瘍等の中枢神経疾患治療において、血液脳関門(BBB)を回避して患部へ直接薬剤を届ける手法(CED:対流増強送達)は極めて有効です。しかし、従来の直線型マイクロカテーテルには以下の物理的課題が存在していました。
薬剤の逆流(バックフロー): 注入速度を上げると、薬液がカテーテル外壁に沿って逆流し、標的部位以外への飛散や組織損傷を招くリスク。
拡散範囲の制限: 出液口が先端付近に限定されるため、3次元的な広がりを持つ病変部全体に均一に投薬することが困難。
2. 解決策:SPIRAL螺旋構造による設計アプローチ
研究チームは、流体シミュレーション(CFD)に基づき、微細な螺旋構造を持つマイクロカテーテル「SPIRAL」を設計しました。この複雑な幾何学形状を現実のデバイスとして具現化するために選ばれたのが、BMF社の投影型マイクロステレオリソグラフィ(PμSL)技術です。


図1: (A) 単一の注出口から薬液が放出される直線型カテーテル (B) 5対の注出口を備え、薬液の全分布が不均一な直線型カテーテル (C) 5対の注出口から薬液が均一に分布する直線型カテーテル (D) 5対の注出口を備え、薬液の全分布が不均一な螺旋(ヘリカル)型カテーテル (E) 5対の注出口から薬液が均一に分布する螺旋(ヘリカル)型カテーテル (F) 脳内における螺旋型デバイスの配置イラスト (G) UVライト下で撮影された3Dプリント製螺旋型デバイス
3. BMF PμSL技術による具現化と詳細スペック
シミュレーション上の理想的な設計を、実際に機能するインプラントとして製造するためには、極限の精度が求められます。BMFの microArch® S240 は、以下の仕様を「追加工なしの一体成形」で実現しました。
超高精度造形: XY解像度 10 μm、積層ピッチ 20 μm。
微細流路と注出口: 外径約 300 μm(壁厚 0.3 mm)の管内に、直径 88.45 μm のアウトレットポートをバリなく均一に配置。
手術用ネジ構造: 脳組織への侵襲を抑えつつ、回転しながらスムーズに刺入するための 2.5 mmピッチの螺旋ネジ を忠実に再現。
優れた機械的特性: 50%以上の歪みが生じても破断せず形状を回復する柔軟性を備え、植入時の安全性を向上。
4. 研究成果:次世代の精密医療に向けて
作製されたSPIRALカテーテルは、従来の直線型と比較して以下の卓越した成果を示しました。
効率的な薬物送達: 螺旋構造が流路抵抗を最適化することで逆流を劇的に抑制し、標的領域全体への均一な拡散を実現。
生体適合性の実証: ラットを用いた in vivo 試験(慢性植込試験)において、炎症反応(グライオーシス)の増加は認められず、長期使用の安全性を確認。
5. まとめ:研究と製造をつなぐ3Dプリンティング
本事例は、3Dプリンティングが単なる試作手段ではなく、医療デバイス研究における「構造設計・機能検証・実装」を一貫して支える不可欠な技術基盤であることを示しています。BMFは今後も、高精度3Dプリンティング技術を通じて、最先端の医療・バイオ分野の研究開発を支援してまいります。
装置仕様や研究用途でのご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。