【目次】
1. LCP(液晶ポリマー)とは
2. LCP(液晶ポリマー)の主な特長
3. LCPの主な加工方法
4. 3Dプリンターを用いたLCPの加工
5. BMFのPµSL技術を用いたLCP微細部品の成形例
6. LCP(液晶ポリマー)とは?まとめ
LCP(Liquid Crystal Polymer、液晶ポリマー)は、耐熱性や流動性、寸法安定性などに優れ、電子部品や精密部品の薄肉化・小型化に用いられるスーパーエンジニアリングプラスチックです。一方、実際の性能や加工条件はグレード、充填材、部品形状によって異なるため、用途に応じた材料選定と成形設計が欠かせません。
本記事では、LCPの基本的な性質、主な用途と加工方法、選定時の注意点を整理します。さらに、BMFのPµSL技術で造形した可溶性樹脂モールドと射出成形を組み合わせ、LCPの微細・複雑形状を試作する方法も紹介します。
この記事でわかること
LCP(液晶ポリマー)の基本的な性質
LCPの主な特長、用途と選定時の注意点
射出成形と材料押出方式3Dプリンターの違い
BMFの可溶性樹脂モールドを用いたLCP微細部品の試作方法
LCP(液晶ポリマー)とは

一般的に、樹脂材料は強度や耐熱性などが低いため用途が限られます。しかし、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)に分類される樹脂は、それぞれが優れた特性を持つ高機能材料です。LCP(液晶ポリマー)は、スーパーエンプラに分類され、高強度・高剛性・高耐熱性などの優れた特性を持つため、小さく複雑な形状の部品が必要となる電子部品や精密機器の構成部品などに採用されています。
LCPが優れた特性を持つ理由の一つが、自己強化構造です。通常、樹脂材料の強度を高めたい場合にはガラス繊維やカーボンなどの添加剤を加えます。しかし、液晶ポリマーは熱で溶解する際に分子が整列し、そのまま冷やして固めることで整列した分子が繊維のような役割をするため、材料の強度・剛性が高くなります。添加剤を加えなくても材料自身の特性で高い強度や剛性を実現できる構造が、自己強化構造です。
LCP(液晶ポリマー)の主な特長
LCP(液晶ポリマー)の主な特長について、4点紹介します。
強度・剛性が高い
LCPは、分子配向が整っている自己強化構造により、強度や剛性が高い材料です。汎用樹脂のABS樹脂は引張強度40~60MPa程度、曲げ弾性率2~2.5GPa程度であり、LCPの引張強度は100~170MPa程度、曲げ弾性率は5~15GPa程度のため、LCPは樹脂の中でも高強度・高剛性であることがわかります。強度などは金属に近い性質を持つものの、耐衝撃性や疲労強度は劣るため用途によっては注意が必要です。
強度・剛性が高いことから、0.2mm以下といった薄肉でも十分な剛性を持ち、細くてもたわまないため、ピンや端子の保持部に使用できます。また、微細なリブ構造でも変形しにくいため、各種センサーや医療機器などの部品にも採用できます。
耐熱性が優れている
LCPの自己強化構造は、優れた耐熱性も実現しています。分子配列が揃っていること、分子同士の結びつきが強いことから、熱を加えても変形しにくいという特長に繋がります。LCPの代表的なグレードにおける連続使用温度の目安が240℃~260℃程度です。短時間使用の場合には、最大で350℃程度まで耐えられる材料もあります。
LCPは耐熱性が高いことで、高温に耐える必要があるリフローはんだ付け工程に対応可能です。多くの電子部品で採用される工程であるため、LCPは電子部品の筐体に採用しやすい材料の一つです。また、エンジンルーム内が高温になる自動車部品、高圧蒸気での滅菌が必要な医療機器、軽量と高耐熱の両立が求められる航空宇宙部品など、さまざまな材料に適用されています。
膨張・収縮が少ない
LCPは熱を加えても分子の並びが乱れにくいことから熱膨張が小さく、湿気などによる吸水でも膨らまないため、環境変化による膨張や収縮が少ない材料です。これは、高い寸法精度が求められる部品に採用するために重要な特性といえます。
例えば、使用時の寸法変化によって接点のズレや部品の脱落が懸念される精密電子機器の材料。また、微細なずれが致命的な影響を及ぼす光通信や温度変化によって測定精度に影響を与えたくないセンサ類などにも採用可能です。
耐薬品性・電気特性・難燃性に優れたグレードがある
LCPには、耐薬品性、電気絶縁性、難燃性に優れたグレードがあります。電子機器、自動車、半導体製造装置など、薬品や熱への耐性と電気特性が求められる用途で使用されています。
ただし、すべてのLCPが同じ薬品や使用環境に対応できるわけではありません。薬品の種類、濃度、温度、接触時間、応力状態によって性能は変わるため、材料メーカーの耐薬品データと実使用条件での確認が必要です。難燃性についても、UL規格の認定有無と対象グレードを個別に確認します。
LCPの主な加工方法

LCPは、加熱により溶融し冷却により固化する熱可塑性樹脂であるため、他の熱可塑性樹脂と同様の加工方法が採用できます。しかし、LCP特有の高流動性や自己強化構造などの特長を活かすためには、工夫が必要になります。
LCPのもっとも代表的な加工方法は射出成形です。LCPは流動性が高いことから、微細・薄肉の形状や高密度な形状でも正確に材料を充填できます。一方で、成形時の溶融粘度が低いため型のすき間から材料がはみ出す「フラッシュ」への対策が必要です。
他にも押出成形やブロー成形などが採用されることがあります。耐薬品性・難燃性が必要な容器に採用するためにブロー成形が採用されますが、本来LCPの材料特性としてブロー成形には不向きです。うまく適用するためには、専用グレードの採用が必要となります。
3Dプリンターを用いたLCPの加工
LCP対応をうたう材料押出方式の材料や研究例もありますが、一般的な樹脂フィラメントと同じ条件で容易に造形できるとは限りません。装置の対応温度、材料の乾燥、層間接着、分子配向、異方性などの影響を受けるため、造形品の特性が射出成形品と同等であるとは限らず、用途ごとの検証が必要です。
一方、LCPそのものを直接3Dプリントするのではなく、3Dプリンターで精密なモールドを造形し、そのモールドを用いてLCPを射出成形する方法もあります。この方法では、LCP本来の材料特性を利用しながら、従来の金型では離型が難しい微細・複雑形状を試作できる可能性があります。
BMFのPµSL技術を用いたLCP微細部品の成形例

BMFは、独自のPµSL(Projection Micro Stereolithography)技術を活用し、マイクロスケールの微細構造を高精度に造形する3Dプリントソリューションを提供しています。
さらに、PµSL技術とBMFが自社開発した可溶性感光性樹脂(SR)を組み合わせることで、射出成形や転写に使用する精密な可溶性樹脂モールドを製作できます。
LCP部品を製作する場合、PµSLでLCPを直接造形するのではなく、まず可溶性感光性樹脂で精密モールドを造形し、そのモールドを用いてLCPを射出成形します。成形後にモールドを高温のアルカリ溶液で溶解除去するため、通常の金型では型開きや離型が難しいアンダーカット、内部構造、微細な三次元形状を持つLCP部品の試作にも活用できます。
可溶性樹脂モールド+射出成形プロセスによるLCP部品

図:可溶性樹脂モールドと射出成形によるLCP微細部品
このプロセスは、量産金型を製作する前の形状・機能確認、複数の設計案の比較検証、従来の金型では離型が難しい微細・複雑形状の小ロット試作に有効な選択肢となります。また、LCPだけでなく、用途や成形条件に応じて、POMやTPUなどの熱可塑性樹脂への適用も検討できます。
ただし、実際の適用可否は、使用するLCPのグレード、溶融温度、射出圧力、部品形状、肉厚、モールドに求められる強度、溶解除去条件、要求精度などによって異なります。BMFでは、3Dデータ、使用材料、予定している成形条件、要求仕様などの情報をもとに、可溶性樹脂モールドの造形可否を事前に確認します。射出成形条件については、実際に成形を行う事業者との確認が必要です。
可溶性樹脂モールドの仕組みや具体的な製作プロセスについては、可溶性樹脂モールドとは?精密3Dプリントによる射出成形・PDMS転写への応用をご覧ください。可溶性感光性樹脂(SR)の特長や対応例については、可溶性樹脂材料|PDMS転写・射出成形用3Dプリントモールドで紹介しています。
LCP(液晶ポリマー)とは?まとめ
LCPは、高流動性、耐熱性、機械特性、寸法安定性などに優れ、薄肉・微細な電子部品や精密部品に用いられる高機能樹脂です。ただし、実際の性能は、グレード、充填材、成形方向、使用環境などによって異なるため、材料データを確認したうえで、実部品による評価を行うことが重要です。
BMFでは、LCP部品の射出成形に使用できる可溶性樹脂モールドの造形サービスを提供しています。PµSL技術を用いて精密な可溶性樹脂モールドを造形することで、通常の金型では離型が難しいアンダーカット、内部構造、微細な三次元形状を持つLCP部品の試作を支援します。
なお、現在BMFが提供するのは可溶性樹脂モールドの造形であり、LCPの射出成形サービスは提供していません。モールドの適用可否については、部品の3Dデータ、使用するLCPのグレード、成形条件、要求仕様などをもとに事前に確認します。可溶性樹脂モールドの造形をご検討の場合は、お問い合わせください。